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2009-05-10 Sun
土曜日の夜、テラスに出てみるとオレンジ色に輝く綺麗な月が目に入った。
後で調べてみると「満月」だったよう。
夫婦二人でテラスに出た私達は、椅子に腰掛け、久しぶりのケンカから勃発した"冷戦"を休止し、しばらく夜空を楽しんだ。
二人で同じ方向を眺めているせいなのか、天空のもとにいる開放感なのか、二人の会話がいつもとは違った形で交わされた。
夫婦で長いこと一緒にいると、恋人時代のラブラブな関係や情熱はだんだんと薄れてくる。(そうでないラッキーなご夫婦もあるとは思うが)そして、大抵は恋愛の感情から、より落ち着いたものへと変化していくもんだろう。新入社員の頃、食事会の席で自分の部門の本部長に、「奥様のことを愛していらっしゃいますか?」と無邪気に質問したら、「愛...というより、責任がありますからね。」と本部長がサっとやや遠くを見ながら、答えたのをよく憶えている。
そういえば以前、ある企業で幹部向けの研修(40歳から50歳)を行っているときに、宴会の席でふと好奇心が働き、「行ってらっしゃいのチュー(キス)をしているご夫婦はどれ位いますか?」と質問したところ、その席にいた約20名の半数以上の男性が手を上げた。
これって、予想外の驚きの比率。その後、更に好奇心にかられ、他社で同じ質問をしても、同じように大体半分位の方が手を上げます。案外日本人の旦那さん、"頑張ってる"と思ったものです。30代とかもっと若い層の男性になると、「お前、チューくらいしないと駄目だよ」と、チューなしの男性同僚を諭す人も出てきます。
それと面白いのが、この結果を見て「行ってらっしゃいのチューをしていない夫達」の反応です。
彼等は、結果に対してものすごく驚愕し、チューをしているという男性達に対して「何だ?!お前ら、それ本当か?なんでそんなことしているんだ?」と、信じられないといった感じで質問したりします。
大体、"行ってらっしゃいチュー"をしている男性に聴くと、奥様に求められて習慣となっていると答える方が多く、まぁ言い換えれば、皆さんそれぞれ奥様に愛されているとも言えるでしょう。女性の方が愛を続ける努力をする人が多いのかもしれません。
さて思い返せば、私達の結婚生活の最初の1年間は、相手と自分との習慣の違いや価値観の違いに改めて気づき、それを受け入れるストレスが、結構大きかったように思えます。特に女性が働いている場合は、家事の負担が増えるので、結婚して数ヶ月後にドっと疲れが出る人もいる。
男と女、元々が違う性を持つ生き物。
お互いに違うからこそ、磁石のように惹きつけられるんだろうけれど、結婚すると逆にその違いが、揉め事のもとになったりするから、やっかいである。
そして、互いの違いがよく分かってくると、抗うことを止めて、どこかお互いに妥協するラインを自然に見出したりする。
お互いに片目をつぶって相手を見るようになるし、ケンカの種になるような余計なことも言わなくなる。
彼が口をあけて寝ていようと、おまんじゅう6個を、目にも止まらぬ速さで平らげてしまったのを見ても、まったく動じなくなるものである。
更に共稼ぎの我が家の場合、二人のエネルギーは外、仕事に向かいがちであると思う。
お互いに出張で家を空けることもあるため、かつては月に1日しか顔を見なかったことだってある。
もしかしたら、男が二人家にいるようなものかもしれない
顔をあわせれば、あ~でもない、こ~でもないと最近の仕事の話しや情報を交換したり、最低限必要なコミュニケーションを取っているが、案外自分達についての深い話しをしていないものである。
だから、気がつくとお互いの状況や気持ちを分かっているようで、まったく分かっていない時がある。
気をつけないと"すれ違い"というものが、知らず知らずにうちに起きている。
冒頭の部分に戻るが、先日の満月の夜のことである。
冷戦を止めて、食後テラスに出た私達は、お互いに静かにそ~っと、月を相手にしたのか、伴侶に言えないような本音の打ち明け話しを、まるで同性の親友にでも打ち明けるように、したのである。
それはまるで、決して相手が自分を責めることがないと、互いに知っているような感じだった。
その夜、何とも言えない開放感が心の中に広がった。
思いがけずギフトを貰ったような気分だった。
よく、アメリカの映画やがTVドラマで、夫婦が二人で、関係をリセットするためにカウンセリングを受ける場面が出てくるが、上手く行く夫婦のカウンセリングって、こんな感じなのかなぁ~とふと思ってしまった。
もしかしたら、その夜は月が私達のカウンセラーだったのかもしれない。
by bandoh
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