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リーダーのコーチング ビジネスマンと人権問題

ヒューマン・ライツ・ウォッチ」(以下HRW)の代表のケネス・ロス氏のセミナーを聴きにいく。
「HRW」は昨年、「ノーベル平和賞」を受賞した世界最大級の国際人権に関わるNGOである。

このセミナー
「ビジネスマンと人権問題は無縁か?」というタイトルで、
マネックス・グループの松本社長が問題を提議するという形式で行われた。
会場には約100名ほどの人が集まっていた。


ケネス・ロス氏


正直言うと、案内が来るまで、「人権問題」について日頃から、私自身はそんなに考えているわけではなかった。むむっ
特に国内の人権問題については、殆ど日々考える機会は薄いと思う。

ただし、アフリカやアジアの子供達の悲惨な惨状を見るにつけ、心を痛めることがあり、何か自分に出来ることはないかと、ここ数年前からスリランカの子供の教育支援に関して、微力ではあるが援助をしている。

なので、国際的な人権問題の改善について、組織の規模以上に、飛躍的な成功を収め貢献している人権NGOである「HRW」の代表が直接話す内容を聞きたいと思った。いつも、「本物に触れる」という機会は貴重である。オッケー


ケネス・ロス氏が語る内容から、
「HRW」が、NGOながら人権問題の改善について、小さな貢献というよりは、一国の政府を動かすまでの、大きな影響力を発揮するまでに至るには、「鍵となる3つの要素と"良循環"」があることが分かった。
ビジネス・モデルというと御幣があるが、大変上手く機能している「システム」だと思う。

★1つ目は「恥をかかせる」プレッシャー1
調査する国に弁護士、ジャーナリスト、学術関係者など「専門家」を調査員として派遣し、徹底的にそこで何が起きているのかを調べる。人権侵害を受けた「被害者」や、被害を目撃した人などから直接話しを聞く、政府と話し合うなどして、公正かつ正確に「証拠」を探すのである。そしてそれらをきちんと報告書としてまとめあげ、プレスを集めて発表し、記事として書かせる。(ちなみにHRWの報告書は、政府よりも信頼性が高いと認識されているらしい。)
このことにより、行われている「人権侵害」について、スポットライトをあて陽のもとに曝し、政府に「恥」をかかせる。
そうやって、独裁者やその政府にプレッシャーをかけるわけである。

★2つ目は外交的・経済的な施策を打つ:プレッシャー2
その国に影響力を持つ援助国の「政府」に対して、「援助」を打ち切るように交渉する。
この事で当事国の独裁者や政府に、人権侵害が「高くつく」ようになるような流れを作る。

★3つ目は国際裁判所にて訴訟を起こす:プレッシャー3
この手法は、最悪のケースとなるが、スーダンの元大統領のように、国際的な形で裁かれるよう手続きを取り、実際に法廷に出廷させるまでの道作りを行う。

この3つのことを、継続して、「繰り返し繰り返し行っている」ことが成功の秘訣らしい。

つまり、優秀な「専門家」を雇って徹底した調査を行う政府の発表よりも高い信頼性を持つ、公正で正確な「人権侵害の報告書」によって各国プレスを動かす引いては政府を動かす実際に人権侵害を改善していくという結果を出し国際的な問題に意識の高いビジネス・マンやセレブから資金援助を受ける優秀な専門家を雇う資金を調達調査を行う.....

という「良循環」を繰り返して、今の影響力を築き上げたそうだ。
(ハリウッドのセレブも資金援助している人が多い。)

なるほど....むむっ

しかしながら、そうはいっても、この流れを作っていくためには、相当の知識とノウハウ・スキルが必要になると思う。

例えば...
・調査能力
・その国の文化や経済・政治、人権などに関する専門知識
・複数の外国語をこなす言語力
・報告書を作成する能力
・プレスを集めて発表するプレゼン能力
・政府と交渉する交渉力
・自分ひとりで活動し完結するための自己管理能力
・危険を事前に察知したり、リスクを計算し回避できる能力

結果としてものすご~く、濃い経験とスキルが必要、いや結果として身につけることになるのであろう....。(すごい)
おそらく「HRW」はそうやって、一人の学者だけでは決して成しえないような、かなりの知識と情報が着実に共有され、高度な政治への影響力を持つ団体へと発展していったのだと想像する。
そこで働く人にとっては「胆力」とか「強い使命感」を持っていないのと、決して続かない"大変で難儀な仕事"だと思う。
がしかし、その職に対する人気は相当高いようで、先日もとあるアジアの国で募集を行った際、1つのポストに300名の募集があったそう。

ケネス・ロス氏は、セミナーで知的にタンタンと語っていたが、その話しの分かりやすさと、静かなるコミットメントが強く印象に残った。
人権擁護団体というと、私の中ではちょっとした「ネガティブ・イメージ」が団体によってはあるのだがあうっ
ロス氏は押し付けたり、驕っているようなそぶりも見せないので、嫌味がない。誠実で信頼できる人という感じがする。彼の能力とそのパーソナリティが、これまで支援者からの賛同を集める要素の一つにもなっているのだろうと思う。

彼は、ロースクールを卒業後、NYにある大手弁護士事務所に就職したのだが、仕事に心から満足できず、その後犯罪を扱う検事となったが、そこでも心から満足できず、「HRW」と出会いようやく「ここだ」と思ったそうだ。自分が本当にやりがいを感じられるのは「人権問題」だと。その後、彼は現在まで約21年間、「HRW」で活動することになる。

ケネス・ロスさんは言う。
「この仕事は信念を持ってできる仕事」であり「違いを起こす仕事」である。そして「毎日課題がある」と。

その一言一言に、静かではあるが、自分自身が「信じる価値を生きる」人が持つ強い「コミット」を感じた。

ケネス・ロスさんを始め、安藤忠雄さん、松原泰道さん、ムハメド・ユヌスさん、皆、一様に分野は違えど、素晴しいリーダーだと思う。
こういった素晴しいリーダーと直接会うことが出来て、話しを聞くことができるのは大変ありがたいことである。

またそういったリーダーの共通点としては、彼等の話しを聞くと、「心の中に勇気が湧いてくる」ことであろう。
何かしら与えられた気持ちになるのである。
皆一様にそういったポジティブな影響力を持ち、「周りの人にエネルギーを与える」人達だと思う。

これは、企業の経営者やリーダー層にも必須の条件だと思う。
一緒にいてエネルギーが縮むリーダーの下にいたら、この不景気の時代、創造性も発揮できず絶対に成果が出るわけが無い。

やはり、一人一人が自分の「価値」を知り、前向きに生きることが大事であると感じた。

さて、ケネス・ロス氏が東京でセミナーを開いたのは、私たち日本人(特に経済や政治のリーダー)が、もっと国際的な視野に立ち、「人権問題」に意識を持って行動を起こすことにあると思う。(世界同時不況で、一番のスポンサーである欧米金融系のビジネスマンからの寄付金も減っていると思うし。

しかし、懸念が....
「商人国家」である"ジャパン"は、商売上のお客様である諸外国(北米や中国、ヨーロッパなど)や原油産出国等に、言いたいことを思い切って言えないのではないだろうか....。むむっ

また、戦争で近隣のアジア諸国を侵略したという「加害者意識」もあり、アジア諸国の中で起きている人権問題について、明確に異議を唱え行動を起こすことは、"微妙"といおうか..、躊躇する傾向があるのではないだろうか。
「チベット問題」や、「中国における人権問題や環境汚染」など、日本政府の対応を見ていて歯がゆい思いをすることが多い。

そう考えると、ある意味、「HRW」が東京に事務所を開き、日本の"プレス"や"政府"に対して、積極的に働きかけてくれる(圧力?)ことは、歓迎すべきなのかもしれない。
私たちの国の世論がもっと成熟し、政府が近隣諸国に対して経済支援以外にも貢献し、国際的にもきちんとした「リーダーシップ」を取って行く、という意味において「HRW東京事務所」がプラスに機能して欲しい。そう思うと、これはありがたい話しなのかもしれない。

結論。
「私も"HRW"に寄付をしよう!」グー



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