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2010-03-04 Thu
「ホントーに、ものすご~く気を使っているんですよ」と、仲の良い某外資系の企業の「女性部長」のA子が、ゆるくウェーブのかかったセミロングの髪の毛を掻きあげつつ、実感のこもった声で断言した。
この日は、女性3人で最近転職したA子の近況の話しを聴くために、一緒に夕食を取ることにしたのだった。
3人が揃ったところで、いつものごとく泡物(シャンパン)で乾杯した。
A子は、知人の紹介で今の会社に転職することになり、新たな会社で働きだしてから、まだ日も浅い。
もう一人の友人B子も、業種は違うが同じく外資系企業で働く「女性部長」である。
A子もB子も、男性以上に気が強く、バリバリ働くキャリア・ウーマンである。
今後の自分の身の振り方を考えているB子にとって、A子の転職の話しは関心の高いテーマである。
40歳を超えてからの転職は、ある意味でハードルが高い。
慣れ親しんだ職場から(偉そうな態度が取れる?)、自分を知っている人が誰もいない環境に飛び込むのだから、本来の自分を知ってもらい周りからの信頼を得ることはなかなか大変なことである。
しかも、部長という役職を担っての転職であれば、当然それなりの実績を期待されての入社であるからプレッシャーも高い。
クライアント先の企業で、中途入社の管理職の人について
「あの人、本当に無能で仕事ができない。なんであんな人を採用したのか」などという話しを時々耳にすることがある。
実際に実務ができないのか、それとも新しい環境の中で、職場の人の信頼を勝ち取るコミュニケーション力が低いのか、理由はよく分からないが、中途入社の管理職で、ポジションに応じた信頼を得ていない人は、少なくないと感じてしまう。
個人的には、そういう信頼を得られない人たちは、総じて社内の意見や空気を読むのが苦手な方々であると感じる。
敵にしてはいけない人を敵にしていたりと、社内力学についての嗅覚が弱いとも言える。
その点で言うと、A子の話しは面白いと思った。
「バンドーさん、私が誰に一番気をつかっているかって言うと、セクレタリーやアシスタントの女性達なんですよ」A子
「分かる、女だから分かるけど、女性って怖いからねぇ」私
「彼女たちを敵にするなんて、とんでもないですよ。み~んな、つぶさに人のことよく見てますからねぇ。瞬時にして、服装、化粧、バッグに至るまで何を持っているか確認して値踏みしてるし、鋭い観察眼でこちらがどれ位の人間なのか、男性なんかよりもず~っと冷静な目で判断してますよ」A子
「そう、そう」
「何か下手なことをしたり言ったりしたら、瞬く間に彼女たちの女性口コミネットワーク網で社内に広がりますからねぇ。しかも、セクレタリーに嫌われたりしたら、大変。何気ない風を装いながら、彼女たちって自分の上司に“○○さん、こんなこと言ってましたよ”なんて、こちらが不利になるようなこと言ったりするじゃないですか」
「それってある。それで役職を追われた人、実際にいますよ」B子
「男性の嫉妬も嫌だけど、女性を敵にするって、もっと怖いと思いません?」A子
「そう思う!」とA子の熱気にやや押されながら、私もB子も揃ってうなづいてしまった。
「だから、私、ホントーに今涙ぐましいほど、ワンダウンポジッションを取って努力してるんですよ。実は社内に一人、あっこの人、敵に回したら怖いっていう女性がいて、もうそういうの嗅覚っていうのか、臭いで分かるんですけど、ものすごく気を使って、荷物運ぶのが見えたら手伝ったりして。でも、彼女案の定、キーパーソンだったみたいで、彼女が何人かに私のことをよく言ってくれているみたいで、知らない部門の人との折衝がやりやすくなったんですよねぇ」
とA子は自分にしかと言い聞かせるように話すと、それに呼応するようにB子も、
「分かる~、私も、自分のアシスタントの女性に対しては特別な配慮をしたりしてますよ。周りの昇給ができないときでも、彼女の昇給分だけはしっかり確保したりして。だって、彼女達に反旗を翻されたら、自分の足場が揺らぐし、彼女達って社内の情報を持ってますからねぇ」と話す。
そう言われてみると、確かに私自身も、ポジッションに関わらず同性である女性に対しては、男性以上に気を使っている。
女性は、女性の怖さをよく知っているからなのだろうか?
冷静に見て、A子もB子も、日本の企業で働く女性の中では、ほんの一握りにあたる部長という肩書きを持っているが、決して女性に嫌われることなく、むしろ味方につけていると思う。(もしかしたら男性に敵がいるかもしれないが)
また、二人とも新しいプロジェクトを推進していく能力が非常に高い。
もしかして、社内で出世していくためには、女性を味方につけることが鍵なのだろうか...。
否、というよりも、専門能力に加えて、女性を味方につけられるほどの場読みと気配りができる能力があれば、仕事もできるということなのかもしれない。
男性の皆様、「女性アシスタントのパワーをあなどることなかれ」である。
by bandoh
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