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清方ノスタルジア 風雅な美

姉と母に誘われて、東京ミッドタウンにあるサントリー美術館で、「清方ノスタルジア」を観ることにした。
鏑木清方の日本画の展示である。

最近、知合いが購入した日本画を観て以来、日本画への関心が高まってきている。

実は東京ミッドタウンに出来た「サントリー美術館」へ行くのは初めてであるむむっ


というよりも東京ミッドタウンには、これまで2度しか行ったことがない。
1回目は、食事の後で友人らと連れ立って、1階にあるバーか何かでワインを飲み、
2回目はオフィス棟に会社がある友人と会ってランチを食べただけである。

そういう意味でも、ミッドタウンを探訪できる今回はいい機会である。



期待に胸を膨らませながら入場すると、まず下記の「春雪」の絵にすぐにパっと目を惹きつけられた。


昭和21年、清方が68歳の時の作品で、
清方が戦争中に、鎌倉から再疎開した先の御殿場で描いたものだそうである。

清方は暗い戦争のさなか、富士山の美しさに心を癒されて絵筆を取ったのかもしれない。
女性の結い上げた髪の生え際と、うなじの柔らかさの、はかない美しさに目を奪われてしまう。

岩絵の具を使った、自然な色合いは、本当に心に優しく染み入ってくる感じがする。
どの絵の女性が着ている着物と帯を見ても、色合いが美しく、心が落ち着いてくる。

東京の神田で生まれた清方が育った明治の時代には、まだ街中に江戸の面影を残す情緒豊かな景色がたくさん残っていたのだろう。
木造の建物、川にかかる橋、町で商売を営む人々の暮らしぶり、着物、結い上げた女性の髪、、
おそらく、今のように豊かでなくとも、文化的にも精神的にも、熟成し調和の取れた美しさが、そこにはあったのだと思う。

どの絵を見ても、時の流れの緩やかさを感じる。
女性はどこまでも、可憐で、実際の女性よりも、ずっと儚く美しく優しさに満ちている
だから、見ているだけで、自分の呼吸が深く整ってくるような感じがして、身体の力が抜けていくようだ。

明治から大正の時代を生きた女性の美しさは、やっぱり今の女性の美しさとは違う。

一緒にいた母は、懐かしむような声で、
「何だか、絵の女の人を見ていると、死んだ坂東の薫おばぁちゃんのことを思い出すわぁ~」と何度か繰り返しため息をついていた。
どうやら、母は、母にとっては義理の母となる、父方の祖母を思い出したらしい。

私は、母の言葉を聞いて、ふと祖母が亡くなったときの父のとても悲しそうな顔を思い出してしまった。
父は葬儀のときに、「あんなに優しい女性はいなかった.....」と、遠くを見ながらしみじみとつぶやいた。

そして、私は、立ち姿の女性の絵を眺めながら、どんなことも寛容に受け止めた父の優しさは、祖母譲りだったのかもしれないと考えてしまう。

そんな思いの中にいると、何だか、まさに“ノスタルジア”な世界に迷い込んでしまったよう。
清方の絵を前にして、少しぼやけてセピアのように色あせた、父の静かな笑顔と祖母の顔を思い浮かべてしまった。


ふと、父と祖母のいた過去の記憶をなぞりながら、清方の絵を一つひとつ眺めている内に、あることに気がついた。

それは、描かれた女性の多くが、みな一様に着物をゆる~く着ている点だ。
もちろん花街の女性を描いたものも多いので、ゆるく着物を着ている女性も多いのだろうが、
普通の女性も含めて、皆キッチリと着物を着ておらず、ゆる~い感じなのだ。
このゆるさ加減が、観ている自分の肩の力を抜く作用もあるんじゃないかと思えてしまう。

目を節目がちにして、ゆる~く、そして縦長に見えるよう服を着ると、女性はエレガントで儚く美しく見えるのかもしれない....

こんなに女性の立ち姿やポーズが美しく見えるならば、ちょっと取り入れてみようかしらなどと、考えてしまった。
柔らかい素材の服を選び、縦長細身で、気持ちルーズなシルエットを作るというのがポイントかもしれない。

ボックス2ボックス2ボックス2ボックス2ボックス2ボックス2

ちなみに、展示されている作品数は、若干清方以外の作品も含まれるが、他の美術館や個人のコレクションから集めてきたもので120点以上ある。
時間があれば、もう一度見に行ってみたい。

さて、私たちは、少し歩きつかれた足を休めるために、ミッドタウンの建物エントランス部分にあるスタバでコーヒーを飲むことにした。コーヒー
美しい絵を鑑賞して、一息入れるときの充実感、都会に住んでいることの便利さを感じる瞬間である。
座ってコーヒーを飲みながら、ふと上を見上げると、思いのほか、組まれた柱と天井が綺麗なことに気づいた。


自宅に戻って空を見あげて気づいたが、綺麗な月である。
この月を眺めながら、今晩は残った仕事を片付けることにしようねこ




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