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演劇のワークショップ

待合せは、農大前のロイヤルホストに午前11時30分。
今日は、俳優の小野進也さんに誘われて、演劇のワークショップに参加することにした。会場となる場所まで、小野さんが連れて行ってくれることになった。

小野さんは、かつてニューヨークのアクターズ・スタジオで演技を学んだことがあるそうなのだが、今回彼が紹介してくれたワークショップは、その手法によく似ているらしい。

「フミヨさんね、今回のワークショップを開催しているのは、古波津監督なんだけれど、彼の映画や、映画作りに取組む姿勢、考え方ってすごくいいんだよね。僕と考え方がピッタリと合うんだよ。それに彼って、ものすごく謙虚で誰にでも平等な対応を取れる人なんだよ。」と、小野さんは古波津監督のことを語ってくれた。

主催している若手監督の古波津陽さんは、海外の映画祭で幾つかの賞をこれまでに受賞している。

小野さんは、最近だと古波津監督の映画「築城せよ」に出演している。

古波津さんは、ニューヨークのアクターズ・スタジオの内容をまったく知らないで、今回のワークショップを実施することにしたらしい。

また、このワークショップは開催すると、役者さんの間で口コミで広がり、すでに満席で募集は打ち切ったらしい。
通常のワークショップだと、リピーターになる人は少ないらしいのだが、このワークショップはやめる人が出ずに、皆続けて参加しているのも、クラスが一杯になっている理由の一つとなっている。

会場でしばらく見学していた私は、古波津監督と休憩中に何度か話しをした。

「僕は役者じゃないので、細かい演技指導を出来るわけじゃない。
けれども、1つのエチュードの中で出来事が起る必然的な流れを解釈し、登場人物の仕事、背景、性格などから起る、感情やリアクションについては具体的に解説できる。だから、参加している俳優たちが、役をどう捉えて、リアルなキャラクターを演じることが出来るのか、側面からフィードバックすることで、よりいい演技をして貰い、いい映画を作りたいんです」と古波津さんは静かに語ってくれた。

今回の大きなテーマは「衝突と和解」。
2名から4名が1組となって、それぞれ「人形パパ」など与えられたお題で、エチュード(演劇)を行う。

これは3つ目のエチュード「聖地コンビニ」でのシーン
男性が、お店の女性オーナーに刃物を使って、脅してお金を要求


怯えながらも、偶然お店に来ていた、昔東京のスナックで面倒を見ていた女性と一緒に強盗を説得


自分の過去のトラウマを語る強盗


エチュードの終了後、ストーリーの展開、それぞれの役の表現、リアクションにコメントする監督

私は古波津さんのコメントをずっと聞きながら、メモしていたが、
一人ひとりの演技のシーンを切り取って、ものすごく的確で具体的で分かりやすく批評していた。
またストーリーの展開についても、評価できる点と、もう1歩進むのに必要なポイントを伝えてくれる。
また、そのストーリーの展開のポイントが、ビジネスのプレゼンテーションでの構成と似ている点が多々あり、
とても面白いと思ってしまった。

4つ目のエチュードの「横取り」
インターネットを使って詐欺を働いていることを、高校時代の同じバスケ部の先輩宮城に知られて開き直る三井


6つ目のエチュードの「UFO発見」
UFO好きの友人女性に気持ちを打ちあけてせまろうとする、物理学者役の太郎くん


演劇のワークショップは、とても興味深かった。

私達が企業で行っている研修の進行とよく似ていると感じる。
経営や教育の場面以外に、演技の指導の世界にもファシリテーションが有効なことを発見した。

小野さんは、
「僕はずっとワークショップに来ているけれど、基本的に彼らの演技を批評しないし、コメントしないようにしているんですよ。」と言った。

それはどうしてですか?と私が質問すると、
「僕達世代の役者はね、監督や演出から、厳しく叱られて育ってきているんですよ。だから、彼らの演技を見ていると、バカヤロー〟とか言っちゃいそうなんだよね。だから、最初から言わないようにしているんですよ」と、小野さんはニコニコ笑いながら答えてくれた。

これも、企業の部下育成の事情とよく似ていると感じた。
昔は、上司が厳しく指導し、時には大勢の前で部下を怒鳴っていたものだが、今ではこういったケースは少なくなりつつあると思う。
私も以前、職場の上司が、朝から先輩男性のことを大きな声で、「○○、バカヤロー、お前ふざけてるんじゃないぞ!」と怒鳴ったことをよく憶えている。

しかし、キャラクターをきっちりと出して表現することは、難しいと思った。
一人で演技するわけではなく、相手がいるので、その場その場で、相手の演技に反応して、自分ではない登場人物になりきって表現しなくてはならないからだ。登場人物に対する解釈が浅いと、思わぬ展開に途中で崩れてしまう。

自分として登場するならば、自分の反応をそのまま演技すればいいと思うが、
自分とは違ったキャラクターの場合、下手すると頭で考えて演技することになる。
すると、やっぱり、どこか一貫性を失った、ナチュラルではない演技をすることになってしまう。

観ていて、やっぱり、その登場人物になりきることが大事だと感じた。

ただ、見方を変えると、NLPでも相手の立場にアソシエートするという方法があるので、
もしかしたら、そういった手法を活用することが出来るかもしれない。
いずれにしても、演じる人物の掘り下げが必要なんだろうと観ていて感じた。

小野さんも12月には、古波津監督の映画に出る予定もあり、ワークショップに参加する予定らしい。
私も個人的に、自分の「表現力」を高めることに非常に関心があるので、思い切って参加してみたい。

方法を考えなくては...。むむっ



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