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2009-08-16 Sun
新橋近辺へはよく行くが、「烏森口」に出るのは初めてだった。
周りを見渡すと、雑居ビルと無数の看板、サラリーマン風の男性が多く、
しばしどこへ行ったらいいか迷ってしまった。
久しぶりに会う男性友人Aと会うために、待合せの場所に到着したのだが、
約束の時間よりも30分早い....。
とりあえず、駅から一番近いカフェでアイスコーヒーを飲むことにした。
鋭角で細長い三角形でできたビルの中にあるカフェは、1階はカウンターのみで2階と3階が座席となっていた。
1階でコーヒーを買って、2階に上がって席を探すと1席しか空いていない。
隣の席は、怪しげな真っ黒に日焼けした痩せた小柄なお兄ちゃん風の男性と、10代後半位の化粧が濃い金髪ヘアの女の子達二人の三人が座っている。
両面ガラス張りの店内からは、烏森口の景色をよく見渡せる。
こうやって見渡すと、烏森口ってちょっとだけレトロ..80年代な臭いがする。
タイムスリップしたような気分になりながら、コーヒーを飲んで本を読んでいると、携帯電話に連絡が入った。
友人Aからである。待合せ場所に着いたらしい。
急いで店内を出て、Aと落ち合い、彼が案内する店へと向かう。
内心、この辺りのお店ってどんな場所なんだろう...とやや不安になりながら彼の後を着いて行く。
彼は道路を曲がって、細い路地をまっすぐ進み、小さな雑居ビルへと入っていく。
「ここだよ。」と彼が、指差す方向を見ると、古くて小さなビルには不釣合いな上品な扉が見える。
何だか猥雑な通りとは別世界を感じさせる、モダンでシンプル、上品な入口である。
和食の「をん」という店であった。
扉を開けると、L字の白木でできたカウンターだけの席がそこにはあった。
カウンターは8席しかいない、こじんまりとした店だ。
そのカウンターの中に、静かな雰囲気の30代位の男性が立っている。
店主の伊東さんと紹介された。京都の祇園で修行して東京にお店を構えた人らしい。
一番奥の席に案内されて座ると、まずは冷たいお絞りで手を拭き、久しぶりの再会にビールで乾杯した。
友人Aは、保険会社で営業の管理職をしている。
忙しい身の上だが、昨年、口腔外科で大きな手術をしてしばらく入院をしていた。
そのせいで、噛む事がままならず、しばらくは食事がシッカリ取れなかったらしい。
以前と比べると、幸か不幸か(幸だね)痩せた。
随分と体が引き締まって、一回り細くなったように見える。
「をん」で出される旬の食材をつまみながら、
しばし、仕事を中心としたお互いの近況についてあれこれと語り合った。
話題はやがて、彼のプライベートライフへと移る。
友人Aは、離婚暦が2度あり、目下3度目の結婚相手を探している。
「それで、この間ちょっと聞いたけど、新しい彼女はどうしてるの?」
「元気にしてるよ。」
「どんな人なの?」
「いい子だよ。明るくて前向きなタイプで、俺のことを好いてくれてるしさ。両親にも紹介されたよ。」
ちなみに、彼女は30代前半で今年ちょうど50歳になったAとは随分年が離れている。
「へぇ~、いい感じみたいねぇ。それで、結婚は?」
「う~ん、いい子なんだけどさぁ...。何ていうか..、決められない。」
「どうして、何か引っかかる部分でもあるの?」
「いや、別にそうじゃないんだ。性格もいいし、仕事も一生懸命やっているみたいだし。」
「特に悪いところがなくて決められないって...何か"物足りない"とか?」
するとAは大きくうなづいた。
「そう、"物足りない"ってやつかもしれない。彼女いい子なんだけどさぁ、さっぱりしてて"ボーイッシュ"な雰囲気なんだよね.....。」
その言葉でピンときた。
そういえば、Aは昔から、濃い目の顔で、色っぽい雰囲気の女性が好きなのだ。
ちょっとインドっぽいというか、目鼻立ちがハッキリしていて、面長タイプの色っぽい女性が好みなのだ。
「なるほどね~。でもさぁ、前回の結婚、それで失敗してるじゃない。色っぽいけど性格が合わなくて。今回の相手は性格がかみ合うんだったら、多少色っぽくなくてもその方がいいんじゃないの?」
「まぁね~。周りにも、お前も50になるんだから、相手に全部を求めずに、いい加減決めろって言われてるんだけどね。」
「そうだよ。相手の子もプロポーズ待ってるだろうし、Aも子供を早く作りたいって思ってるんだから、決めちゃえばいいのに。」
「でもさぁ、俺、バカだと思われるかもしれないけど、いつか理想の女性が現れるんじゃないかって思えるんだよね~。」
その言葉に思わず「はぁ~」と思い、やや意地悪な気持ちが湧いてきた私。
「贅沢言ってるわ。そんなこと言ってたら、いつか気づいたら汚いオジサンになっていて、相手を選ぶどころじゃなくなってるかもよ。」
「そうなんだろうけどねぇ、でも俺のこと信頼してくれてる後輩でさぁ、独身の女の子紹介してくれるって奴が結構いるんだよ。」
「だったら、さっさとその女性達を紹介して貰って、今の彼女と比較して、自分を納得させてみたら?」
「いや~、それがさぁ、実際会ってみると、それぞれに素敵な女性でさぁ、み~んないいと思えちゃうんだよねぇ、ハハハハ」
と困ったような、それでいて心から嬉しそうに笑いながら答えるA。
その様子を見て、真面目に話しを聞くのが何だかアホらしくなってしまった私。
それにしても、この余裕。
昨年の手術前までは、こんなに余裕シャクシャクではなかったのだが....、
痩せたことによって、男としての自信がよみがえって来たのか?
それとも、昇格も決まり心に余裕が生まれたのか???
しかし、考えてみれば、Aの話しは、「恋愛における東京市場」をよく表していると感じてしまった。
つまり、美人で高学歴で高収入の30歳以上の独身女性がワンサカ溢れているが、
彼女達に見合う妙齢の独身男性は少ない。
さらに、日本人男性の傾向と言えるが、彼らは欧米人男性に比べると、恋人探しにあまり熱心ではない。
また、セダクティブに大人の女性を扱う術と、自分を魅せる技を持っていない。
ゆえに、大人の独身日本人女性は、なかなか"恋愛ホルモン"(造語)も活発化しない。
これはあくまでも私の仮説だが、縄文時代からの"稲作文化"と深い関係があるのではないかと睨んでいる。
稲作文化というのは、部落などの単位で、皆が集団となり力を合わせて稲作を行い、食べていくための日々の努力を重ねる文化である。
狩猟民族のように、短期的にエネルギーを集中して獲物を取るアグレッシブなエネルギーとは違い、
稲作文化では穏やかでタンタンと長く続けるエネルギーが求められる。
そんな日本人男性は、古来よりずっと、親類やら村の長から嫁を紹介して貰い自らの嫁を娶っていた。
穏やかなエネルギーで真面目にコツコツと働く男であれば、セクシーでなくとも大人から信頼されて嫁を手にすることができたであろう。
社会のシステム(見合い)がそうなっているのだから、男は女探しにアグレッシブにはならない。
お洒落や、話し上手でなくとも真面目であればいいのだ。
いや、逆にアグレッシブでないからこそ、せっせと親類やら村の長が嫁を紹介していたのかもしれないが。
狩猟民族は、そうではないと思う。
アグレッシブで、獲物を取る能力が高い男が、自力で女を手に入れていたと思う。
だから、狩猟民族の末裔は、今でも女性探しについては、アグレッシブである。
大体、欧米系の男子は、子供の頃から女性に対する対応を、周りの大人を見て学んでいる。
その影響も大きいと感じる。
一方、稲作文化の末裔の日本人男性達の嫁探しのDNAは今も根深く残っていて、
世の中が見合いではなく、自由恋愛が中心となっていても、
"アグレッシブな女性探しのスイッチ"が入らないのかもしれない。
もしくは30歳以降の"アグレッシブなスイッチ"が入っている男は、
既に結婚していて、更には不倫でもしていて、20代後半の女性の結婚を阻んでいるかもしれない。
昔、アキバにPCを買いに行って、驚いたことがある。
(あの頃はそういえば、道端でオウム心理教の信者が、マーハポーシャのチラシをよく配っていた。)
売り場に行くと、サラリーマン風の男性が山ほどいるのだが、皆同じように見えてまったく見分けがつかないのだ。
同じようなグレーのスーツ、白いワイシャツ、色の薄いネクタイ、ボサボサっとした油っけのない短い髪か、七三に分けた頭、めがね、つやのない顔、肩からかける塩化ビニール性か合成皮革風のバッグ。
何だか、驚くほど特徴が似ていて、見分けがつかない。そしてあまりにもお地味......。
さて、"恋愛における東京市場"の話しに戻るが、
友人Aのような男性にとって、今の東京市場は天国かもしれない。
友人Aを客観的に見れば、
50歳になったといっても見た目に若く、ハンサム。
清潔感がある、服装センスOK、年収も悪くない、会話も幅広い。
頭もいいし、美味しいものを食べるのも好きだ、そして独身。
そして、女性については、アグレッシブに探し対応している。
その気になれば、モテるであろう。
"恋愛における東京市場"においては、
Aのように、伴侶となる女性を積極的に探し、
自分の見た目にも気を使い、センスもまぁまぁという独身男性があまりにも少なすぎるのではないか?
「どの人も、実際に会うとそれぞれに素敵でねぇ~。みんな好きになっちゃう。」
なんていうセリフは、私の友人の独身女性達からは一度も聞いたことはない。
東京においては、
女子向けには「恋愛ホルモン活発化講座」を開き、
男子向けには「独身男性改造講座」でも開くべきかもしれない。
by bandoh
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