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2009-05-06 Wed
雨が降る日、ぬれた道路を車で走る。
手術を終えたばかりの友人を見舞うため。
GW中とあって、道路は比較的空いている。
思っていたよりも早く到着。
友人から頼まれた「のど飴」と、週刊新潮を抱えて病室へ。
受付を済ませてエレベーターに向かう途中、ふと亡くなった父を思い出した。
こんな風に、あの頃も病院へ来てたなぁ...。
手術を終えたばかりの彼女は、幾分やせたせいなのか、目がひときわ大きく見える。
長い髪をお下げに編んだ友人は、普段以上に若く見え、さながら女性学生のようだ。
思っていたよりも元気な姿にホっとする。
リハビリがてら、ゆっくりと一緒に歩き、病院の中のタリーズへ移動。
それにしても、人間の回復力ってすごい。
つい4-5日前にお腹を切ったばかりなのに、もう歩けて一緒にお茶まで飲める。
友人の場合、まだ年齢も若いし、バイタリティもあるから回復もきっと早いと思う。
でも、いつも忙しい日々を送っている友人にとって、病院で安静を保ってじっとしている日々はさぞ退屈だろう。
いつもは見ないTVに夢中らしい。
「TV番組って案外面白いって知ってた?フミちゃん。もうすっごく面白くて病み付き。」
「へぇ~、何が面白かった?」
「え~とねぇ、、NHKの番組とか、すごくいい。」
「そう、NHKっていい番組あるよねぇ。私も好きな特集とかある。バラエティはどう?島田伸介の番組とか?」
「島田伸介って、上手いよね。あの人が司会すると面白い。」
などと、たわいないのない話しをしていると、彼女のBFと同僚も見舞いにやってきた。
会話は広がり、賑やかなお見舞いとなってきた。
見舞いに来た同僚は、最近の会社でのサプライズとなるニュースを運んでくれた。
実は、彼女達が働く会社につい数週間前に、将来有望な敏腕男性社員が入社したらしい。
仕事は正確で速く、幅広く仕事をこなす。
また性格はまじめで温厚、年齢が若いのに落ち着いていて判断力があり、誰にでも対応できる"マチュア"なタイプとのこと。
(今時得がたい人材ですよね~)
彼は仕事先の紹介を経て、このたび彼女達の会社に入社が決まり、会社の役員も当然のこと喜んで彼を迎えた。
(ちなみに入院している友人のプロジェクトを引き継き、後釜のリーダーとなったのは彼である。彼には数多くのスタッフがつけられ、自分の時との待遇の違いに、友人は正直な話し、ちょっとムっとしたらしい。)
先月の彼の結婚式には、会社の社員全員が二次会のパーティで彼の結婚を祝った。
そして、彼の今後に期待を寄せた。
しかしながら、GWに突入する前のある日、前途有望で"マチュアな彼"は突然姿を消してしまった...。
その日の朝、珍しく彼は出社時刻を過ぎても姿を現さなかった。
遅刻かもしれないと、周りは当初思ったらしい。
しかし、しばらく待てども彼は姿を現さない。
その日は既にクライアントと幾つかのミーティングを抱えた大事な日である。
異変を感じた同僚は、彼の携帯電話に連絡を入れるが繋がらない。
家に電話をかけても出ない。
日頃優秀でまじめな彼のことゆえ、連絡なしに休暇を取ることはないだろうと誰もが思った。
もしかしたら、どこかで行き倒れてしまったんじゃないか、トイレのユニットの中か何かで倒れてそのままなんじゃないかと、周りは心配し憶測を始める。
そこで、消防署に連絡を入れて倒れて病院に担ぎ込まれた人や、事故に遭遇して身元が分からなくなっている人はいないかを確認したところ、そういった人物はいないと分かる。
万事休す。一体何が起ったんだろう??
しばらくして、彼の妻が働いている会社を憶えている人がいたので、電話番号を探りあてて彼女に連絡を入れることに。
彼の妻は会社にいた。
そして電話口に出た彼女は、静かに相手にこう告げたらしい。
「前にも同じようなことがあったので、大丈夫だろうと思います。」
実際に彼の家にいってみると、彼は自宅にこもっていた。
どうやら、ストレスが重なって出社できなくなったらしい。
「へぇ~、そんなことってあるんだ!あんなに、み~んな、優秀な人がきたって騒いでたのにね~!!」
と入院している正直な友人は、少々勝ち誇ったような口調になる。(その気持ち分かる)
「彼、真面目だったから、ドンドン仕事を振ってこられても、イヤって言えなかったんじゃない?」
「社長も、"彼は仕事がとってもできる人だから期待してる"なんて、みんなに紹介してたでしょ。あれって入社して間もない人にはプレッシャーだよね。逆に最初は慣れないだろうから、まずはゆっくりペースをつかんでくださいって言われる方がずっと楽だよね~。」
「でも、彼の妻、絶対に強いわ。結婚式の日、顔を一目見たときからそう思ってた、この人、気の強い人に違いないって。彼は彼女の横で、すみませんって感じだったもん。」
「それにしても、男の人で職場から失踪するというか、逃げちゃう人って案外いるよね?」
「そういえば、私も何人かそういう男性知ってる。でも逆にあんまり女の人で職場から逃げた話しとか聞かないよねぇ。」
「だって、女の場合は仕事が一杯になって仕上げられないって思ったら、"これ以上は出来ません。もしどうしてもと言うなら優先順位をつけてください"とか、一杯一杯になる前に言う人の方が多くない?」
「それって言えてる。前の会社の上司も、"だから、女は嫌なんだ!出来ませんって平気で言っちゃうんだもんな"って言ってた。」
「でも、出来るって言ってて、出来ない方が、ずっと物事を悪くしない?責任果たせないじゃない。」
「賛成、だって、そこから会話がスタートして状況が見えてきて解決策が出るってもんよ。」
「そう思う!ハイ出来ます!って毎回出来ないのに引き受けて、ギリギリになって出来ないと思ったら、行方をくらまして、妻の会社にまで連絡入れられたら、それこそ最悪じゃ~ん!」
「男って、やっぱり子供の頃から縦社会の枠にしっかり組み込まれてて、上司にNOってなかなか言えないよね。」
「男の方が女よりも、仕事が出来ないってことを、クヨクヨに気にするのよ。やっぱり女よりも繊細なんじゃない?」
私も会社を失踪し辞めてしまった人をこれまで3人知っているが、全員男性である。
何が理由か分からないが、突然職場を放棄しいなくなってしまった。
先日久しぶりに会った同僚のご主人も、職場でパニック症候群を起こして以来、ずっと仕事に復帰できないでいるらしい。
男と女、どちらが強いかなんて比べてもしょうがないが、身のまわりをみたら、女性の方がストレスに対応できている人が多いのかもしれない。
今の時代、男も女も外で働き、お互いに評価やポジションをめぐって競争することも珍しくない。
昔の女性のように、家にいて家庭を守り、"主人の仕事についてはまったく分からない"などということは、益々減っていくだろう。
"男性の仕事は聖域で、女性には分からないミステリアスなもの"ということは、もはやない。
私達男女が、互いに助け合い、今後も互いにパートナーとして生きていくとしたら、働く私達女性は男性の繊細な面をより意識する必要があるのかもしれない。ストレス社会に弱いのは"弱音をはけない"男の方だと。
by bandoh
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